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仕事を味わうなら鮨文だ。 |
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雑誌 クロワッサン |
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| ▲人気のおまかせコース3500円。握り10カンと卵に巻きもの、お椀付き。スタッフ一同の「おいしそう」の声に「おいしそうじゃないの。旨いの」。案内してくれた小川貢一さんである。「俺は、ここのすししか食べたことない」 | ▲こちらも自家製の塩辛。大瓶2000円、小瓶1200円。地方発送可。 |
| すしは私などが語るには恐れ多い題材だ。 だから私が教わったそのままの、また感じたままの、海岸の、すしと店の話を書き綴ってみよう。 築地魚海岸で食べるすしは「安くて旨い」と思っている方が案外多い。実は、さにあらずだ。旨さは保証する。が、値段は街のすし屋とさほど変わらないと思う。では、何か違いがあるのか。おそらく、たとえ値段が同じであっても、ネタそのものが違う。決定的な差はこれだろう。なにしろ海岸の(場内の)すし屋の客は、魚のプロ、しかも顔馴染みばかりが主なのだから。 ところで「寿司」というのは当て字だそうだ。正しくは「鮨」。ならば海岸で食べるすしは、鮨だ。我々がその「鮨屋」に食べにゆく。するとまず、魚のプロたちを相手にしている店。そのえも言われぬ威圧感に、少々身構える。が、プロの人たちと横並びで、同じものを食べられるのだというちょっとした優越感。好奇心もある。そして、いよいよにぎりが目の前に、とん。いつも食べているすしとは(店内の雰囲気にも影響されてはいるだろうが)やはり、違いを感じる。期待通りだ。と、非日常的な、ひと味違う満足感を与えてくれる鮨屋は場内には9軒ある。私の初体験はそのうちの一軒「鮨文」でだった。 すしという字が二種類使われているのと同じように、すし屋の種類もまた、いまではふたつある。まず、新鮮さを売り物に、素材勝負の店。そしてもうひとつは、新鮮さはむろんのこと「仕事」をしたネタも出してくれる鮨屋、である。鮨文は、その「仕事」を味わえる数少ない店だ。 例えば酢でしめたコハダ、その子供であるシンコ(これは小さいので1カンに2尾、3尾と使うのだ)。そして「煮もの」と呼ばれるネタなどにみてとれる。煮ものというのは、煮はまぐり、蒸しあわび、しゃこ、そして穴子などをさす。煮もののにぎり。ほんのり醤油色に柔らかく色づいている。火が通っているにも拘わらずぷりぷり。なのにしっとりしている。見るからに、仕込みに手間暇技術のかかる「仕事」が滲みでている。家庭なぞでは、ちょっとやそっとじゃできやしない。これに、「つめ」を刷毛でつけてくれる。タレを煮詰めるから、つめ、と呼ぶ。鮨文のそれは、上から足して、足して、もう百年以上も使い続けているという。甘めの精製した「つめ」は、煮汁をとるときに水分をまったく使っていない。だから絶対に腐敗しないのである。 冷蔵庫のない時代から営み続けているというこの店の「煮もの」を味わう。すると、かつての江戸前鮨とはいかなるものだったのか、おぼろげながらも浮かんでくるからありがたい。とろん、とした「つめ」をつけてもらった穴子のにぎりを頬張る。あら。噛む前に、穴子が舌の上でとけちゃった。かれこれ8年前の初体験のことだ。驚いて声が出た。鮨分の親父さんは、他の客を賄いながらニヤリとしていたっけなぁ。 |
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| ▲いかにも職人顔のご主人と、にこやかな女将、英語堪能、外国人客に大人気、娘の真喜さん、修行十分の佐藤成人さん。 | ▲鮨文のお薦めは、すしだけにあらず。自家製の西京漬はお歳暮に。きっと喜ばれるはず。銀だら800円、きんめ1000円、甘鯛1200円。各ひと切れ。地方発送可。 |